生成AIは「仕事と仕事の橋渡し」に使う。中小企業で活用が進まない理由と、私たちの日常フロー

中小企業2,503社の調査では、生成AIを業務で使う企業は約7割、ほぼ毎日使う企業は約2割。toolchainjpが日々の業務フローのどこで生成AIを使っているのか、そして一般の企業で使いにくくなる原因を、自社の経験から整理します。

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今の時代、生成AIを毎日使わないなんてありえない。私たちは、そう思っています。

とはいえ、最初からうまく使えていたわけではありません。以前は私も、もっともらしい嘘をつかれる「ハルシネーション」に振り回されたり、そもそもどう頼めばいいのかわからなかったりと、悩んでばかりでした。

それが今では、Grok Bot や Claude に調べものや文章の下書きを頼み、Claude Code でちょっとしたプログラムを書き、Claude で資料のデザインを整え、決まった時間に動く定期タスクでレポートを受け取る。そんな使い方が毎日の当たり前になりました。体感として、かなりの時間が削減されています。

そんな中、先日、中小企業の多くが生成AIをうまく活用できていない、使い方がわからない、という調査結果がニュースになっていました。そこでこの記事では、私たちが生成AIを業務フローの中でどう使っているのか、そしてなぜ一般の企業では使いにくくなってしまうのか、私が思う原因を書いてみます。

7割が使っているのに、毎日使うのは2割

株式会社エフアンドエムが運営する中小企業総合研究所が、2026年7月に会員企業を対象に行った「中小企業における生成AI活用に関する実態調査」(有効回答2,503社)では、次のような結果が出ています。

  • 生成AIを現在業務で利用している企業は約7割
  • そのうち、ほぼ毎日利用している企業は約2割で、最も多いのは「必要な時だけ」のスポット利用
  • 社内ルールを整備している企業は約1割
  • 利用をやめた企業、まだ使っていない企業の最大の理由は、どちらも「どの業務に使えばよいか、具体的なイメージが湧かない」

中小企業2,503社の調査結果を示す横棒グラフ。生成AIを業務で利用する企業は約7割、ほぼ毎日利用する企業は約2割、社内ルールを整備している企業は約1割。7割と2割の間は「使っているが毎日ではない」層

費用やセキュリティへの不安よりも、「何に使えばいいのかわからない」が一番の壁になっている。これは、私たち自身が以前つまずいていたところとほとんど同じです。

生成AIは、少し汎用的なソフトウェア

そもそも生成AIとは何なのか。一般的なソフトウェアと変わらないと言えば、変わりません。入力を受け取って、処理をして、結果を返す道具です。

違うのは、その守備範囲の広さです。表計算ソフトは計算、会計ソフトは仕訳と、従来のソフトウェアは決まった作業のために作られていました。生成AIは、文章を読む、要約する、分類する、比べる、下書きを書くといった、これまで人が手を動かしていたさまざまな作業をひとつでこなせます。この汎用性が一番の強みです。

さらに最近は、既存のシステムとつなぐのがずいぶん簡単になりました。そのおかげで、「人の代わりができる」と言われる領域が一気に広がっています。

MCPで「ふわっとした指示」が形になって返ってくる

既存システムとの連携を簡単にした技術のひとつが、MCP(Model Context Protocol)です。生成AIを、さまざまなアプリのインターフェースに接続するための共通の仕組みです。

MCPの何が新しいのか。それは、こちらが抽象的な指示を出しても、生成AIが自分で判断して、どのアプリのどの機能を使えばよいかを選び、ある程度正しい形で結果を返してくれることです。

たとえば「先週のブログの数字を見て、気になる点をまとめておいて」と頼むだけで、アクセス解析のデータを取りにいき、比較して、要点を文章にしてくれる。これまでなら、人が画面を開いて、数字を書き写して、考えて、まとめていた作業です。一つひとつの手順を細かく指定しなくても形になる。ここに技術的な革新があります。

ただ、こう説明しても「で、うちの会社ではどこに入れればいいの?」と思われる方が多いはずです。私たちもそうでした。そこで、私たちの会社の例をそのまま紹介します。

私たちの日常業務は、普通の会社と同じ流れ

toolchainjp は、中小企業向けのIT支援とコンテンツ運用をしている小さな会社です。日々の業務の流れは、ほかの会社とそれほど変わりません。

  1. 営業・マーケティングで、見込みのお客さまと出会う
  2. お客さまのニーズを聞き取る
  3. 見積もりを作り、金額を相談する
  4. 実際の作業をする
  5. 納品する、サービスを提供する

この流れの中では、各工程で誰かが情報を受け取り、処理し、判断して、次の人に渡しています。営業が聞いた話をメモにして見積担当へ。見積の前提を作業担当へ。作業の結果を報告書にしてお客さまへ。受け取っては整理し、判断してはまた渡す。仕事の多くは、実はこの繰り返しです。

私たちが生成AIを一番使っているのは、この情報の橋渡しの部分です。

営業・マーケティング、顧客ニーズ、見積・金額交渉、実作業、納品・サービス提供の5工程が左から右へ並び、工程と工程の間で生成AIが情報の要約・整理・引き継ぎを担う図。判断と最終確認は人が行う

たとえば、次のような使い方です。

  • 営業 → ニーズ整理: 打ち合わせのメモや問い合わせ内容を生成AIに渡し、課題、要望、予算感、確認できていない点に整理する
  • ニーズ → 見積: 整理した要件から、作業項目の洗い出しと見積の下書きを作る。過去の似た案件と比べて抜け漏れがないかも確認させる
  • 見積 → 実作業: 合意した内容を、作業者向けの手順やチェックリストに変換する
  • 実作業 → 納品: 作業ログや変更点から、お客さま向けの報告書や説明文の下書きを作る

どの工程でも、判断するのは人です。金額を決める、方針を決める、お客さまに出す前に確認する。そこは変わりません。変わったのは、「前の工程の情報を読み、整理し、次の工程の形に直す」という作業の手間です。ここが簡潔になるだけで、一日の中で取られていた時間がかなり減りました。

定期タスクで「集める・評価する・報告する」を回す

橋渡しと並んでよく使っているのが、決まった時間に生成AIが動く定期タスクです。MCPでつないだツールからデータを集め、決めておいた観点で評価し、レポートにしてチャットに届けてくれます。日次のものもあれば、週次のものもあります。

MCPで生成AIが日次・週次で自動実行する「データ収集→評価→レポート」と、人が担う「判断→記事・施策」の5工程。施策の結果は数値に戻って仮説を確かめ、PDCAとして回り続ける

人がやるのは、届いたレポートを読んで判断することです。毎朝メールを確認するのと同じ感覚で、生成AIのレポートに目を通すのが日課になっています。

ブログ運用のPDCA

いちばんわかりやすい例が、このブログの運用です。

Google Search Console の数値を週次で生成AIに読ませると、「表示回数は多いのにクリック率が低い検索語句」や「掲載順位が10位前後で止まっている記事」が一覧で上がってきます。あわせて業界のニュースや検索トレンドとも照らし合わせ、「この語句で検索する人は料金の目安を知りたいのではないか」「既存記事に節を足すか、別の記事にするか」といった次の一手の候補を出してもらいます。

どれを書くか、どの方向に進むかを決めるのは私たちです。書いたあとはまた数値を見て、仮説が当たったかを確かめる。このサイクルが毎週一周します。

顧客管理やマーケティングも同じ型で

顧客管理やマーケティングオートメーションは、オープンソースのツールを中心に組んでいます。高価な専用システムを入れたわけではありません。大事なのは、データが一か所にまとまっていて、生成AIから読める状態になっていることです。

そうしておけば、問い合わせの傾向や、フォローが止まっているお客さまの洗い出しも、同じ「集める・評価する・報告する・人が決める」の型で回せます。

ここで私が特に効いていると感じているのが、SFAやCRM、HubSpotのようなツールまわりです。営業やマーケティングの担当にとって、画面を開き、項目を探し、設定を変え、必要な情報を拾い出す——ソフトウェアをウェブUIから扱うこと自体が、かなりめんどうな作業になっていることが多い。

生成AIとMCPをつないでおくと、その負担がかなり減ります。情報の取得も、設定の変更も、自分が画面を操作しなくてもよくなる。生成AIがMCP経由で取りにいき、必要な形にして返してくれる。この連携こそが、「橋渡し」の実務的な強さだと感じています。

一般の企業で生成AIが使いにくい、と私が思う原因

ここからは、私自身の経験と、ご相談をいただく中で感じていることです。生成AIが使いにくくなる原因は、ツールの性能よりも、使う側の環境にあることが多いと思っています。

業務が分解されていない

「営業に使えないか」「経理に使えないか」と部署単位で考えると、なかなか答えが出ません。生成AIが手伝えるのは、部署ではなく作業です。打ち合わせメモを整理する、見積の抜け漏れを確認する、報告書の下書きを書く。業務をこのくらいの粒度まで分けてみて、はじめて「ここに使える」が見えてきます。調査で最大の壁とされた「イメージが湧かない」は、多くの場合ここから来ていると感じます。

「得意・不得意がわからない」は、起点がずれていることが多い

「生成AIの得意・不得意がわからない」——調査でもよく聞く悩みです。ただ、私はこの問いそのものが、スタート地点としてずれていることが多いと感じています。

大事なのは、生成AI一般の得意分野を先にカタログ化することではありません。いま現場で困っていることは何か。その困りごとに、生成AIが手を貸せるかどうかを考えることです。先ほどのCRMやHubSpotの画面操作のように、「いま自分がつまずいている作業」から入った方が、使いどころは早く見つかります。

もちろん、向き不向きの感覚はあとからついてきます。材料はあるけれどまとめるのに時間がかかる作業——要約、分類、比較、言い換え、下書き——は得意です。一方で、社内にしかない最新の事実を正確に答えることや、最終判断を任せることは苦手です。私がハルシネーションに悩んでいた頃は、この線引きができていませんでした。ただ、最初の一歩は「得意一覧」ではなく、「いま困っていること」からで十分です。

個人のスポット利用で止まっている

詳しい人がひとりで便利に使っていても、その使い方は会社の仕事の流れには残りません。その人が忙しくなったり異動したりすれば、使われなくなって終わります。「必要な時だけ」が最も多いという調査結果は、このことを表しているように思います。

効果を測っていない

何分かかっていた作業が何分になったのか。出力をどれくらい直したのか。記録していないと、続ける理由も、改善の手がかりも生まれません。測らないままだと、いつの間にか「なんとなく便利なもの」に戻ってしまいます。

橋渡しが人に依存したまま

そして、私が一番大きいと思っているのがこれです。多くの会社では、工程と工程の間の情報の受け渡しが、特定の人の頭の中や、その人なりのメモ、口頭のやり取りで成り立っています。この橋渡しが形になっていないと、生成AIを差し込む場所がありません。

逆に言えば、「誰が、何を受け取って、何に直して、誰に渡しているのか」を一度書き出してみるだけで、生成AIが入れる場所は意外とたくさん見つかります。

小さく始めるなら、ひとつの橋渡しから

いきなりMCPや定期タスクを組む必要はありません。私たちも、最初は手作業でした。

まずは、毎週必ず発生している情報の受け渡しをひとつ選んでみてください。打ち合わせメモから議事録を作る、先週の数字から振り返りメモを作る、といったものです。毎回同じ指示文で生成AIに渡し、出てきたものを人が確認して直し、かかった時間を一行だけ記録する。これを数週間続けると、指示文の直しどころや、足すべきデータが見えてきます。自動化を考えるのは、そのあとで十分です。

使い始める際は、顧客の個人情報や未公開の情報は入力しない、出力は人が確認してから社外に出す、といった最低限のルールも、数行でいいので決めておくと安心です。

おわりに

生成AIは、魔法の道具ではありません。少し汎用的で、つなぐのが簡単になったソフトウェアです。だからこそ、仕事の流れのどこに置くかで、効果が大きく変わります。

私たちにとって、それは工程と工程の間、情報の橋渡しでした。みなさんの会社にも、毎日のように誰かが受け取って、整理して、次へ渡している情報があるはずです。そこが最初の入り口になるかもしれません。

もし、自社の業務のどこから手をつければいいか整理してみたい、ということがあれば、お気軽にお声がけください。私たちの経験が少しでもお役に立てばうれしいです。


出典: 株式会社エフアンドエム 中小企業総合研究所「中小企業における生成AI活用に関する実態調査」(2026年) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000157.000029825.html

藤本 晃輔代表取締役

Goldman Sachs・NTTデータ・NTT研究所で大規模な基盤を支えたのち、2024年に株式会社Toolchainを創業。中小企業のDXを、業務分析から内製化まで支援しています。

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